「拠出型企業年金保険」という商品はご存じでしょうか?
名称が「企業型確定拠出年金」と似ているため、Googleで検索しても混同して表示されますが、これらは全く別ものです。
この投稿を見ていただくと、「拠出型企業年金保険」という商品がどのようなものか分かりますので、個々人の置かれた状況に合わせて適切なご判断が出来るようになると思います。
拠出型企業年金保険と企業型確定拠出年金は別もの
「拠出型企業年金保険」も「企業型確定拠出年金」も、資産形成や老後の生活資金を準備することを目的としているところは似ていますが、名称の通り、「拠出型企業年金保険」は団体年金保険と言われる「保険」の一種です。「拠出型企業年金保険」は、商品の名称が「企業型確定拠出年金」と紛らわしいので、「拠出型企業年金保険」と言わず「保証積立」とか、「共済年金」というような別の商品名を使っている会社もあります。
「拠出型企業年金保険」の拠出型という言葉は、従業員が保険の掛け金を「拠出」することを意味しています。逆に「企業型確定拠出年金」は基本的には会社が掛け金を支払っています。
資産の運用に関しては、「拠出型企業年金保険」は引き受け保険会社が運用しますので保険料を支払っている加入者が運用指示することはありませんが、「企業型確定拠出年金」では加入者である従業員自らが、配分変更やスイッチングなどの運用指示を出します。
このことからもわかるように、「拠出型企業年金保険」は、あくまでも従業員が個人的に加入する保険商品で、会社は保険会社から有利な条件を獲得して、まとめて準備しているという位置づけです。
拠出型企業年金保険の特徴とは
保険料の取扱い
「拠出型企業年金保険」の保険料は所得控除である生命保険料控除の対象です。その意味では、従業員が保険料を支払う場合の税務上のメリットはありますが、これは個人が一般の生命保険に入っている場合と同様です。
運用期間
基本的に長期の資産形成を行うためのものであることから、加入期間が短ければ元本割れの恐れがあり、長期間にわたって加入することが前提とされています。
現在では10~15年以上は加入することを想定しないといけませんので、終身雇用制度を前提とするライフスタイルには適していますが、転職しながらキャリアアップしようとする最近の若い方のライフスタイルにはあっていないかもしれません。
運用利回り
「拠出型企業年金保険」の利回りは、現状では1.2~1.7%程度で安定した運用を期待できますので、利息が殆どつかない銀行の定期預金よりは有利と言えます。
長期運用を前提にした場合、基本的には元本割れのリスクは少ないですし、万が一、引き受けている保険会社が経営破綻に陥った場合でも、生命保険契約者保護機構による補償の対象となり、90%程度(正確には払い込んだ保険料の90%ではなく、生命保険会社の責任準備金の90%ですので、一般には払い込んだ保険料の90%よりは少なめになります)は補償されますので、「企業型確定拠出年金」で株式等の運用をしている場合と比べれば、低リスク、低リターンの運用商品という位置づけになります。
税務上の取扱い
「拠出型企業年金保険」の受取方法は一時金あるいは年金形式なりますが、一時金の場合は総合課税の一時所得、年金形式の場合は総合課税の雑所得です。
「企業型確定拠出年金」は、退職時に一時金で受け取る場合は分離課税の退職所得、年金形式の場合は総合課税の雑所得になりますので、一時金で受け取る場合の税務上の取扱いが異なるところも、分離課税の退職所得の場合の方が税務上のメリットを得やすいことと比較すれば注意が必要です。
拠出型企業年金保険はどのような人に向いているか
ひとつの会社に長く勤めることを予定している方が、リスクの少ない資産運用を考える場合には「拠出型企業年金保険」は有効です。保険料の支払いも給料から控除されますので、確実に資産形成が進みます。
例えば「企業型確定拠出年金」をやっている方も、ポートフォリオの中で元本確定商品を組み入れている場合があるかと思います。そのような場合、概ね元本が保証される資産運用商品として「拠出型企業年金保険」を別に購入していれば、「企業型確定拠出年金」では株式を中心にリスクを高めにとった運用を行い、自分の持つ全体の金融資産全体のポートフォリオの中でバランスを保つという方法も考えられます。
まとめ
終身雇用の前提が崩れている現状では、「拠出型企業年金保険」のニーズはそれほど高いものではないかもしれません。逆にこれから60歳を迎える方々の中では、若いうちに「拠出型企業年金保険」に加入されている方もまだ多くいらっしゃると思います。
「拠出型企業年金保険」と「企業型確定拠出年」は全く別ものであることを理解して、「拠出型企業年金保険」の特徴を理解すれば、退職後の老後生活資金を計画的かつ効率的に準備できますので、資産形成の手段として「拠出型企業年金保険」のような保険商品も選択肢に入れて検討してみては如何でしょう。
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