契約書を確認するコツ② (期限のない契約の注意点)

契約書

契約には一般に期限が定められていますが、期限の定めのない契約も存在します。そのような契約は契約が長く続くため、契約を締結するには十分な注意が必要です。契約では期限を確認することが重要ですが、もし結ぼうとする契約に期限がない場合は、どのような点に注意して契約を確認すべきか、この投稿を最後まで読んでいただくとわかりますので、前回に引き続き、是非、契約内容を確認するコツを掴んでください。

期限の定めのない契約の主な例

雇用契約

雇用契約には有期限の場合と無期限の場合がありますが、無期限の場合が、期限の定めのない契約にあたります。この場合、労働者が雇用をやめるか、雇用主が解雇するまで雇用契約は継続します。ただし、雇用主から労働者を解雇する場合には相当な理由が必要ですので、雇用主の側から見れば注意が必要です。

一方、労働者からみれば安心して働けますので、長期間にわたって労働に専念しやすい環境といえ、会社にとっての熟練した労働者を確保できるメリットがある雇用形態と言えます。

合弁契約

二つ以上の会社が共同して事業を行う場合、合弁契約を締結することが一般的です。それは長期にわたって事業を行うにあたっては、お互いが尊重しあい、同じベクトルで経営する必要があるからです。契約に期限があるとお互いの信頼感に隙間風が吹き、それが原因で事業がうまくいかなくなるというリスクを避けるため、敢えて期限を定めていないことが多いです。

一方、事業を始めた時は長期間にわたり一緒に事業を続ける前提であっても、事業が変化し、合弁を解消する必要性が出てくることは十分あり得ます。したがって、合弁契約の場合は、合弁契約の解除条件を細かく決めておくことが非常に重要です。結婚も契約の一種ですが、結婚と同様、一緒になる時より別れるときの方が多大な労力を要します。最初に別れるときの取り決めを行っておくことはのちのトラブルを防ぐためには重要ですので、最初にその内容をよく吟味することが必要です。

賃貸借契約

賃貸借契約では、期限を定めた契約が増えてきていますが、期限の定めのない契約が貸主と借主の間で結ばれることもあります。原則として、借主が賃料を支払い続ける限り、貸主は物件を使用し続けることができますが、日本では借地借家法という特別法により、借主がより強く保護されるため、特に貸主となる場合は注意して、期限を定め必要がないかを慎重に判断する必要があります。

また、リース契約には期限があっても特に注意が必要です。リース契約は契約期間が長いため、数年経って事情の急激な変化により契約を解除しなくてはいけない状況に陥っても中途解約として不利な条件が定められていることが多いからです。契約期間が短ければ、少し我慢すれば契約を満了して解除出来ます。実際に始めてみて分かることも多いですので、可能であれば、5年を超える長期間の契約は避けた方が無難と思います。

借入契約

お金の借入契約は専門用語では「金銭消費貸借契約」と言います。これは借りたものをそのまま返すのではなく、借りたものは一旦消費することを前提とした上で、期限までに同じ価値のものを返すという契約だからです。借入契約の場合、借りた方は原則として期限まではお金を返さなくてよいという「期限の利益」を持っています。ですのでお金を貸す側も借り手の期限の利益を守らなくてはいけませんので、その点は注意が必要です。貸手としてはどんな時に期限の利益を剥奪して契約を解除出来るか、借手としてはどんな時に期限の利益を失うかという事前の取り決めが非常に重要な論点になります。

ライセンス契約

知的財産権を守るライセンス契約では期限の利益を定めないこともあります。ライセンス契約者はライセンス料を払い続ける限り知的財産権を利用し続けられますが、長期のパートナーシップを前提としているため、ディズニーのライセンス契約などで報道されるように、仮に期限の定めがあっても契約を終了させることは双方にとって現実的ではない場合もあり、契約当事者双方の信頼関係がより大きなポイントになります。

期限の定めのない契約の注意点

以上のように、期限の定めがないということは長期間契約が継続することを前提とするため、契約の解除条件や契約の変更条件に関する条項を入念に確認することが重要です。

加えて、契約期間が長期間に及ぶということで、物販などの単純な売買契約とは異なり、相手方の信用調査を充分に行う必要があります。借りる側で言えば、信用調査を徹底的に行われるということに留意が必要です。信用力が不足していれば、保証契約などで信用補完を行うことも検討いたしましょう。貸す側であれば、どのように信用補完をしてもらうか、契約を開始する前に十分確認をしないといけません。

一般的ではありますが、結ぼうとしている契約が他の法律や規制に合致しているかも確認が必要です。先に述べた借地借家法のような特別法は、それに抵触した契約を定めても無効となってしまいます。契約期間が長期にわたる場合は、他の法律に抵触していないか、専門家に確認することをお勧めします。

まとめ

契約に期限がないことは長期間にわたって契約に縛られるということを意味します。したがって、通常の契約以上に慎重に締結すべきです。

特に契約が長期に及ぶということは、契約を締結した当時の事情も分からなくなっているケースもあると思います。そうした場合はトラブルが起きた場合、その解決がより困難に可能性もあります。

英語の契約ではリサイタル条項(Recitals)と呼ばれる契約書の記述がありますが、これは契約当事者の契約までの背景や事情を契約書の前文として残しているものです。最近の契約ではあまり見なくなっていますが、契約期間が長期に及ぶ取引では、当事者の信頼関係を維持するためにも、そうした契約当時の事情を後世に語り継ぐというもの有用な手段ではないかと私は考えます。

期限の定めのない契約に限りませんが、契約は無いよりも当事者同士の信頼があって初めて結べるものです。是非、現在の状況だけで考えず、長期的な視点で「結ぼうとしている契約は維持できるか」ということを確認した上で、できれば専門家にも相談しながら契約は締結するようにしてください。

コメント